●食用油と魚の棲める水の関係
 みなさんは、BODという指標を御存知ですか?
BODとは、水の汚れ具合を示す指標です。
BODが小さいほど、水がキレイです。
(但し海水の汚れの程度を計るには、CODという指標を使います。)

問題
 ところで、皆さんが日頃お使いのサラダ油や、マヨネーズのような食用油類の
BOD値を御存知ですか?
 淡水魚は、BOD値がどれ位以下でないと棲めないか御存知ですか?

答え
・食用油類のBODは、約10万です。
・淡水魚は、BOD約5程度未満でないと、棲めません。
 (汚れたところでも棲める種類も有りますが。)

 ということは...
なんと食用油は、約2万倍にも薄めないと淡水魚は生きてゆけないのです。
食用油は、人間の健康には良くても、魚には大敵なのです。

けっして、フライパンや、ホットプレートを
流しでジャブジャブ洗ってはいけないのです。
ましてや、「古い天ぷら油をそのまま流しに捨てる」などと言う野蛮なことは...
(そういえば、ちょっと前に人魚の頭に古い油をドバッとかけるCMがありました。
 このCMは、油を固めて捨てられるようにする製品のものでした。)

紙で油分を拭き取って、ちゃんとしたゴミ焼却場で
処理してもらう方がまだ環境負荷が小さくなります。
例え、下水道が完備している地域でも、丸洗いは避けるべきです。
各家庭が気軽にどんどん流すと、下水処理場の処理負荷が大きくなり、
処理能力が追い付かない可能性も有ります。

重油が魚と出会ったら、魚が汚染されて生き伸びて捕獲されるよりも、
死んでしまう確率の方が高いと思われます。

そうならない為にも、重油が拡散しない内に、
全力で回収しなければ成りません。
漁場から遠い内に...

●重油と魚が出会う確率 970211追加
科学的に証明せよとのご要望が多いので、気が進まないのですが、
もうちょっとお付き合いください。

海中で魚が重油に出会う確率を考えてみましょう。

解りやすくするために、日本海よりも小さい日本列島を舞台とします。
私が海底から漏れ出した重油の役をします。
みなさんは、海中を泳ぐ魚の役です。

さて、私(重油)がみなさん(さかな)と出会うためには、
どのような条件が調う必要があるでしょうか?
空間的に一致しても、時間が別だと出会えません。
両者が出会うためには、XYZの空間3軸の座標と
時間軸のTの4条件がすべて一致しなければならないのです。
これは、お解り頂けると思います。

さて、ではこの4条件がすべて一致する確率はどのくらいでしょうか?
今の例えですと、日本海よりも平面的に小さい日本列島で
私とみなさんが出会える確率です。

どれだけ私が北陸で動き回っていても
みなさんと出会うことはまずありませんよね。
人間は道路・鉄道駅・空港など交通結節点に集中するので、
そこで出会う確率は若干大きくなります。
しかし、魚には駅や空港はありません。
海中を自由に移動します。
人間の移動は、おおよそ平面に限られます。
しかし、魚は水深の浅深も自由です。
人間の移動よりも自由度(数学用語です)が大きいのです。
しかも、日本列島よりも大きい日本海です。

もうお解りのことと存じます。
人間がばったり出会う確率よりも
魚が重油と出会う確率はとんでもなく小さいのです。
これが「科学的な」答えです。

まして、魚の集まりやすい場所(漁場)と
今回のタンカーが沈んだ場所は全く違います。
繰り返しになりますが、海面に浮いた後の重油は、
海中の魚とは接触しません。

海面に浮くまでに魚と重油が出会う確率が
とんでもなく小さいとしたら、
「タンカー沈没=魚が重油に汚染」
という短絡的な印象は極めて非科学的な感覚でしかない
ことがお解り頂けると思います。

私は、決して理屈をならべるつもりは有りません。
みなさんからのリクエストにお答えしたに過ぎません。
科学は、振り回してはいけないことを
科学者の端くれとして理解しているつもりです。

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