Urban Stage Research Institute Corporation

       
 

総合研究開発機構(NIRA)
     市民公益活動基盤フォーラム

多様性のある社会の
創出をめざして
参加報告

 

1994.10.13作成
(肩書きは全て当時のもの)

1.市民公益活動概要

 市民公益活動については現在、社会学・経済学を始めとして各方面から
 @地域社会コミュニティの機能低下を補填する機能
 A市民参加制度の確立を展望できる
 B地域経済へのパラダイム転換の機能
 等の点で、非常に注目されている。
 「市民公益活動」を社会としてどう取り扱って行けばよいか、国政の問題としても五全総などの場で今後議論がされる様子である。
 市民公益活動の今日的意義、社会的役割について整理すると、以下の通りである。

 

 

 

a)市民公益活動の定義
 @市民公益活動は、住民(反対)運動ではない。
 市民公益活動は様々な市民活動のなかでも公益性が担保されたものである。
 また、過去の行政に対峙する住民運動とは全く主旨を異にする活動である。
 即ち、活動する市民が自己責任の原則を理解し、自らの社会的役割を認識した上での活動である。また、市民活動としての範囲を超えるような点については、行政との協力関係の上に適切な相互の役割を担いながら目的を全うしようとするものである。

 

 A市民公益活動により多様性のある社会への対応が可能となる。
 多様性のある社会の実現にあたっては、市民からのニーズが多様化するあまり、従来通り行政機構だけで対応しようとすると、巨大な行政を目指さねばならなくなる。
 今後の高齢化・少子化による財政的な面、規制緩和の社会的潮流等を見ると、行政機構の肥大化は、時代の流れに逆行するものである。
 しからば、行政機構の肥大化を抑制しつつ、多様化する社会ニーズに対応するにはどうすればよいか。
 実は市民公益活動に、その解決点が見いだせる。新しいニーズへの速やかな対応・個々の市民に対する木目こまやかな対応など行政機構と市民との間のグレーゾーンにあたるようなニーズに対して、それを充填する第3の機構として、市民公益活動に対応を委ね、行政機構は側面から支援するという役割分担の構造がそれである。

 

 B市民公益活動は、コミュニティ機能の低下を補填するという活動だけでなく、 新しい社会の創造を展望するものである。
 市民公益活動については、コミュニティ機能の低下により空洞化した領域のうち、行政・企業のいずれもカバーできない領域を補填する機能として着目されている面があるが、新しい社会機能の創出、新しい社会パラダイムの創出までも展望することができる。

 

 C新しい産業のインキュベーション機能も有する。
 例えば、・市民の草の根交流・国際交流が発展し、培われたノウハウによって交流産業が展開する・イベントでのアンテナ商品が本格的に出荷される。
 等の面でこれらの交流・イベントに関する市民公益活動にも新しい産業を見いだし、発展させる機能を持っている。
 むしろ、初期に大きな投資を要せず、一部楽しみながら行われるこれらの活動こそ、新しい産業を孵化させる場となる可能性が高い。

 

 D市民参加への展望
 市民公益活動が公共的活動への市民参加の基本になる。本フォーラムでも同様な意見を多く聞くことができ、かなり実現性が高いことが実感できた。
 また、この様な自覚ある活動を通じて市民相互による社会的意識教育(人づくり)の場としての役割にも大きく期待できるところである。

 

 E市民公益活動は市民が多く集まるということで公共性が担保される。
 市民公益活動が、社会扶助機能・社会参加機能・社会創造機能のいずれを実現するにも、公共性が担保される必要がある。その担保は行政がする必要はなく、多くの市民がその活動に集うということで公共性が担保されているとみなすことができる。
 
b)市民公益活動が全国的に注目されている時代背景
 @社会的ニーズの多用化、公共性の拡大化
 A行政機構の肥大化抑制(行政改革)
 成熟化社会を向かえるにあたって公共性というものがどんどん拡大解釈されてきている。
 市民公益活動はそのような公共性の拡大に対して行政機構の肥大化を抑制しつつ適切な対応を図るという意義がある。
 B東西冷戦構造、55年体制の崩壊
 サービスを享受しながら批判する勢力と、サービスを提供しながら批判される勢力という従来の2極構造が崩壊し、それぞれの社会的役割分担に対する認識・自覚が浸透しつつある。
 その意味では、
 C市民の社会的意識の目覚め
 D地方分権に対応した地域社会への指向
も、市民公益活動が注目されている時代背景として見逃せない。
   
 
c)七尾市への適応
 @市民公益活動は、七尾市にも存在する
 七尾市に存在する様々な市民活動を市民公益活動として捉らえ直してみると、マリンシティ推進協議会、地域振興懇話会等の活動が既に、市民公益活動として存在している。
 A七尾市政は市民公益活動を支援する先進事例と評価されている
 マリンシティ推進協議会に対する七尾市の活動支援は、既に行われている。この意味で七尾市政は、市民公益活動を支援した街づくりの先進的な事例として全国的にも高く評価されているところである。
 B今後の方向性
 一方、条例などにより一定の基準要件を満足したものとしての支援体制が確立していないため、今後不公平感をもたらす可能性がある。
 早急に市として市民公益活動を公に認知するとともに、それらに対する活動支援策をまとめ、公平に対応するとともに、七尾市に於ける市民公益活動を育てる必要がある。
 現在、先進的な自治体で既に検討・取り組みが始まっており、七尾市もこれまでの評価をさらに確実なものとすべく、市民公益活動に対する支援・育成策を確立する必要がある。
 このような政策展開こそが、これまで施されている様々な施策をさらに実効有るものとし、地域一丸となった活力ある七尾市を建設する社会的な基盤制度あるいは、社会システム的バックボーンとなって行くと確信されるのである。
   

2.フォーラム要旨

(1)あいさつ
 星野 進保  総合研究開発機構理事長
 
(2)オリエンテーション「調査の目的と概要」
 木原 勝彬 (社)奈良まちづくりセンター理事長
・現在、市民公益活動というものがおおいに注目されている。
・企業におけるフィランソロピー活動が活性化し、省庁においては市民公益活動のネットワーク化が進められている。
・このような今こそ市民公益活動が危機的な状況に直面していると感じざるを得ない。
・市民公益活動団体はその設立趣旨を振返り、自主的・主体的な市民公益活動とは何かを見つめなおす時期にきている。
・本報告書は以上の視点から以下の点について述べてある。
  @市民公益活動の社会における機能
  A市民公益活動の実態把握(文献+ヒアリングによる)
  Bアメリカ合衆国におけNPOの研究
  C市民公益活動基盤整備に関する政策課題
   
 
(3)報告
 @「市民公益活動の意義・現況・課題と今後の動向」
 佐野 章二   地域調査計画研究所代表
・市民公益活動とは自主的なものであり、多様性のあるものであるがゆえに、それを総括しようとする事自体が間違っているのではないか。
・市民公益活動を捉える場合、@市民とはなにか、A住民運動との違いは何か、B公益性とは何か、という3点をまず明確にしなくてならない。
・住民運動とは地域社会に問題がおきたときに生まれる運動であり、そのようなものが生まれない社会の方が幸せな社会といえる。
・市民公益活動とは事前に自分自身の問題を提案し、多面的に捉えて積極的かつ継続的に取り組む活動であり、地域社会にとってはある方が幸せであるといえる。
・行政や大企業を中心とした上からのドラスティックな社会変革に対し、市民公益活動は下からのジワッとした社会変革を目指す。
・市民活動とはひとつのことから始まり、活動が多面的に進むという性格を持っている。
・市民公益活動は種類や規模が大変多様であり、市民活動支援型の市民活動ができてきている現状である。
 A「海外における市民公益活動に関する制度と現状」
 今田 忠   笹川平和財団主席研究員
・海外(米および西欧)では市民公益活動というものはなく、民間非営利組織という概念しかない。
・非営利セクターの要因1はヘテロジニティ(多様性)の確立である。
 米国はヘテロジーニアス(多元主義)社会であり、民間非営利組織はアドボガジー機能(少数者の意見を政策に反映する機能)としての働きの側面が強い。しかし同時に多様性のある社会とは不安定な社会であるという点を見逃してはいけない。
 これに対して仏国は19Cまで国家と市民との間に団体が入るべきではないという考えが支配しており、今も根強く残っている。
・非営利セクターの要因2はサブシディアリティー(権力補正の原理)の確立である。
 この考えは独や蘭の考え方であり、社会問題を市民自らの手で解決してゆこうとする姿 勢が強い。あらゆる社会問題に対して「政府は何をしているのか」という声をすぐあげる
 日本(=アナアナリズム)とは大きく市民意識に差がある。
・政府の金銭的援助の姿勢に関する違い
 米国・西欧は非営利組織の活動に対し積極的に援助をするが、組織運営は自律的である。
 日本では公の意思に従わない団体には、政府がお金を出すべきでないと憲法に明言してある。
 B「市民公益活動をめぐる制度の現状と促進のための政策的課題」
 山岡 義典 プランニング&プログラム・コンサルタント
・市民公益活動の基盤整備は制度上の基盤整備と、下から湧き上がるさまざまなエネルギーがうまくかみ合わないといけない。
・基盤整備の基本的な考え方は以下の6点である。
 @社会の柔軟な発展には民間非営利セクターの存在が不可欠
 A民間非営利セクターの基盤をつくるのは市民公益活動である
 B市民団体自体が制度や組織の枠にとらわれない力を蓄えなく
  てはならない。
 C市民・企業・団体が市民公益活動の活性化のために細かく支
  援・協力する必要がある。
 D行政の基盤整備は団体活動の自律性を損うものであってはな
  らない。
 E基盤整備の方策は、日本の社会的・文化的現実をふまえたもの
  でなくてはならない。
・政策的課題として重要な点は次の3点である。
 @支援組織(サポートセンター)の確立
 A資金支援の確立(個人の寄付の社会化)
 B法人化制度の確立
・基盤整備の確立は、国家ビジョンのイメージにどのように関わってくるかを常に視点としてもっていなくてはならない。
   
 
(4)パネルディスカッション
 「市民公益活動をめぐる制度の現状と促進のための政策的課題」
コーディネーター 松岡 温彦  住友信託銀行審議役
パネリスト(50音順)
 大武健一郎 大蔵省主税局総務課長
 絹川 正明 関西電力地域共生グループ課長
 澤井 安勇 岡山県副知事
 出口 正之 (財)サントリー文化財団事務局長
 藤井 絢子 滋賀県環境生活共同組合理事長
 
松岡:
 まずは、パネラーの方々の活動の現況をお願いします。
 
藤井:
 私共の環境生協は環境専門の生協であり、厚生省で認可されている唯一の環境事業体である。
 私共のような団体は継続と、若者の参加が非常に困難であり、私たちはそれを克服する事をひとつの目標に活動してきた。
 活動の中心は生活廃油のリサイクル活動であるが、国の制度があまりにも現場の目をつぶすものが多いため、それを克服する手段をいろいろ打出している。
 
絹川:
 電気を使っていただいてありがとうございます。
 地域共生グループは昨年できました。中味は広報と地域共生の模索です。
 私共は将来あるべき企業像を軸に、企業のフィランソロピー活動を考えているが、企業の使命とフィランソロピー活動がかけはなれてきているような気がしている。本業とフィランソロピー活動は一体でなくてはならないのではないか。「企業の責任である」という意見が多いが、責任と貢献とは次元の違うものである。
 私共の取り組み事例からすると、基盤整備の具体的方策は次の3点である。
@企業の貢献は、従業員を市民として解放する事と、企業セミナーの市民への開放ではないか。
A社内資料のうち、市民活動にとって有益であると思われるものも一般公開
Bマッチングギフトの制度化
 公益活動への個人寄付が行われた場合、企業の方もそこに寄付をする制度従業員のボランティア活動を支援する事こそが企業の役割ではないか。
 
松岡:
 個人寄付に関しては、団体の信用度の問題がテーマのひとつになるであろう。本来自分の身近な団体が信用があるはずなのに、現状は公が認めたもののみが信用があるように思われているのが問題ではないか。
 
出口:
 財団法人で仕事をしていると、私たちの支援がどこに行っているのかという疑問や、現制度の拡大化でよいのかという点で、矛盾点を多く感じる。もっと根本的な部分において問題があるのではないか。
行政と非営利セクターとの関係においては次の点を制度化する必用がある。
 @市民公益活動の団体を設立するときにおける明文化
 Aとりわけ公的利益をうむものに対する税制上の優遇
 B市民公益活動への支援に対する政府の非干渉
 C政府としてできない点、またはすべきではない点についてのパートナーシップの確立
 D非営利セクターの独立性を、政府は侵害しないこと。
 E非営利団体の乱用の規制
 F情報公開の義務制
 ぜひ新しい風は大阪から始めてみたい。
 
松岡:
 大阪には反行政の風土があり、そのような土壌がある。本質論」が大阪でどこまで戦わすことが出きるかがポイントになるであろう。
 それではいよいよ行政サイドのひとに話をいただきます。
 
澤井:
 3月まで自治省の企画室長をやっていました。そこでは地域づくりまちづくりの支援ボランティア活動を取扱っていました。
 市民公益活動と地方行政との関わり合いはジャンルが非常に広いため、私の話は地域づくりとの関係を中心にしたい。
 @市民公益活動と行政との関わり合いの流れ
 80年代に活動が目立ち始めてきたが、88年「ふるさと創
 設事業」が始まると市町村が地域づくりの主役になり、地方
 自治の不変性を打破するための市民活動が多くなった。
 A市民公益活動と市町村との関係
 市町村は住民にとって最も身近な公共団体であり、地域づく
 りは住民団体とアシスタントグループによって行い、行政が
 それに参加するという形が望ましいのではないか。そのため
 には、両者の関係が対立的なものから脱却し、社会における
 アドボガジー機能の確立を両者が協力し合い築き上げるべ
 きである。
 現在、行政と市民活動のパートナーシップが求められており、緩やかなネットワーキングを目指してゆかなくてはならない。行政からの視点では地域づくりは市民団体との融和が必要であるが、団体としての独立制や自律制の扱いをどうするかが今後の課題になるであろう。
 
大武:
 私どもの仕事は、どのような税制が必要か考える、大蔵省の商品開発部のような仕事です。この仕事は、明確な国家像がないとできない仕事であり、このようなフォーラムにはこれからもどんどん参加したい。
 日本という国は明治時代からいかに統一するかを目標に行政活動を行ってきた。いかに平等で、いかに均質かを目指してきた。ある意味、市民公益活動の受入れはそれに逆行するものであり、そこらへんが困難な点である。
 日本は早期に多様性のある社会をめざす方向に転換するべきであり、そのためには国、地方の行政改革が不可欠である。
 企業は利潤を追及してほしい。事業活動と公益活動が混在しているためにNPOが育たないのではないか。企業のやるべきことをやったうえで、財団などの団体をつくりNPO活動を支援すればよい。
 NGO・NPOのリストをもっと公側が出すべきである。
 市民公益活動の公共性は誰が担保するべきか。審査体制をしっかり組織化するべきではないか。
 日本の場合は土地を利用の観点から見ていない。そこで土地利用計画がなく、都市計画はトップダウ方式である。都市計画を市町村レベルでやればよいのだが、市町村は顔が見えるためできないという。これに対してヨーロッパの自治は城壁社会の都市計画からきており、歴史的に自治に対する感覚が大きく違う。
 
松岡:
 パネラーの皆さんの意見を集約すると次の3点の問題点が浮び上がってきます。
@民が先か行政が先かという問題。個人的には行政が後からついてくるかたちが望ましい。
A税制の問題。納税が市民の責任の第1歩であると考え、分権について考え直す。
B企業の在り方の問題。
この問題点をふまえて、パネラーの方々に意見を頂きたいと思います。
 
藤井:
 私たちは「買物が世界を変える」というテーマで活動しています。
 企業監査は会計監査だけでなく、環境監査を取入れるべきです。そこで私たちは、労働福祉・自然環境等にどれだけ企業が貢献しているのかのチェックリストを作成しているところです。
 企業は市民公益活動に対する、制約のない補助が必要です。
 ドイツのエコバンクは銀行の投資先の情報を公開しています。預金者である消費者は金利だけでなく、投資先を見て銀行の地域貢献度・社会貢献度・環境貢献度を知ることができそれにより預金します。これなどは消費者主権の先進的な事例であります。
 
絹川:
 企業の利益追及が、役割分担を明確化するという意見が出ましたが、地域への貢献が企業の発展につながることが多くその意味では企業の社会貢献は「啓発された自己利益」といえる。
 企業の社会貢献という言葉が誤解を生んでいるような気がする。今はまだ社会責任を果たしているにすぎない。
 
出口:
 国家像の変更は、行政・市民・企業の者の方向転換により可能である。しかし今までの日本システムの驚くべき成功が、その変更の足をひっぱるであろう。
 市民の方が「市民団体はこう変る」と宣言し、行政が「市民団体とどう連帯してゆくか」を宣言することにより、社会システムも変るのではないか。
 市民公益活動は市民である我々から見るとすばらしいシステムであるが、国際社会の一員とみた社会では問題が多い。
 
澤井:
 問題点の1についてふれると、市民公益活動の先駆的・冒険的な活動について、行政が後押しできるものは後押しし、できないものについては勝手にやってもらうのがよいのではないか。
 市民公益活動の団体としての問題点は、どうやって社会的認知を得るかという点である。それはつまり地域コンセンサスをどうやって得るかということである。そのためには、市民公益活動自身、より専門知識を持たなくてはならず、行政には見る目が必要になり、さらに中立的に判断のできる地域プランナーの存在という、3つのマンパワーの結晶が必要になる。
 先駆的・冒険的な政策に対して行政が実行できるかという問題については、地域づくりが市町村レベルで行われていないのがネックになっており、分権と規制緩和がまず必要である。そのうえで一定のフィルターにかけられた市民公益活動を行政に参加させたらどうか。
 
大武:
 税制の話をすると、日本では所得からしか見ていなく資産の観点がぬけている。これは同等の所得の人は同等の資産があるという間違った認識からきており、早急に改めるべきである。
 企業メセナは不況で飛んでいってしまった。企業のインセンティブをどこに求めるかが問題である。
 
松岡:
 次に会場から意見を頂きたいと思います。
 
岡:
 私は環境NGOと株式会社代表の2つの顔を持っています。それは英のグランドワークを目指すにはこうするしかなかったためです。
 企業の寄付は、目的をはっきりさせてそこに金を出すのがよいのではないか。
 企業の寄付は自由なものであるということが保障できるシステムが必要ではないか。
 公益活動への金の流れというインフラ整備が、非常に遅れているのではないか。
 
濱:
 先日、七尾市長と話をする機会があり「市民公益活動への支援」について議論したところ、市長は以前から大変関心があるということで、本フォーラムの話を報告することになっている。
 地方自治体として今すぐどう対応すべきかという点と、市民公益活動の目指す方向性の2点から問題究明にあたらなくてはならず、簡単に答えのでないものである。
 ぜひこの会は、形を変えても残してゆきたいものであり、継続を要望する。
 
山本:
 市民公益活動の法人化は是非とも必要であろう。
 ・ 地域プランナーをどう育ててゆくか。
 ・ 地方財政上の問題点はどのように処理するのか。
 
西:
 調査した方に聞きたいのだが、政策的課題に交流というものが述べられているが、どのような方法があるのか。
 
松岡:
 それでは最後に会場の方からの質問の答えと、シメをお願いします。
 
藤井:
 先駆的・冒険的市民活動といわれましたが、地方における公益活動はメンバーが同じであり、名前さえ変えれば同じような団体でもお金が入ることを利用している団体ばかりで、市民の参加も名ばかりである。
 滋賀県においては知事の「文化をやりたい」というビジョンに対し、「近江ファンド」をつくり、自発的な市民活動が自由に使えるお金にすればどうか。
 
絹川:
 企業は従業員の囲い込みをなるべくしないような動きになってきている。
 企業がひもつきでない金を出してほしいという意見があったが、企業はいろいろな利害関係のうえで成り立っており、そんな簡単にはいかない。
企業・市民・行政のそれぞれに価値観があり、それぞれがそれぞれに、それをおしつけようとしがちである。
 先進的NPOが行政によってつぶされることが多いが、担当者レベルでの問題が多い。
 
出口:
 市民公益活動の問題は総論は楽しいが、各論はドロドロしていて難しい。
 国や企業に市民活動が責任を求めるのは間違っている。自分はどうするのかという個の確立に話を戻し、長期の視点を持って取り組むべきである。
 
澤井:
 自治体の対応の問題指摘については、団体はいろいろあるため評価システムがないと、援助はできないであろう。その場合、行政の恣意的な評価は適切ではないため評価するための第3者的なシステムが必要になる。
 社会の分権化が進めば、地域社会においては住民が意思決定してゆくしかない。国と地方自治体との違いは、住民チェックの厳しさでないか。
 最後には地域コンセンサスをどう得るかが課題になるのではないか。
 地方分権と規制緩和が日本には必要であり、そのうえで行政と市民の対話を求めてゆかなくてはならない。
 
大武:
 政府ができる身近なことは、制度の理解を深めることにより必要な団体には寄付できるようにする一方、情報公開したうえでチェックリストをつくることである。
 市民公益活動には公共性の担保は欠かせないであろう。
 自治体が個人・企業から寄付を受け、自治体が配分するという方法もある。
 寄付が経済活動のあるところにしか生まれないとなると、どうしても都市において活動が活性化する一方、過疎地においては難しくなる。
 
木原:
 西さんから出向というものはどうしてもヒモつき構造をつくりだすのではないか、というご意見がでましたが必ずしもそうではなく、やり方次第ではうまくいく。問題は出向先が奈良まちづくりセンターのような(自由で柔軟で研究熱心な)団体であるかという点と、帰るところが、出向者を受入れる体制・人材をいかす体制になっているかどうかという点である。実際セクター間の流動化はかなり進んできている。
 濱さんのいうように、形は変るにしても、この動きを継続してゆくべきである。
 
松岡:
 本フォーラムでは、個人・企業・団体のそれぞれの立場が確認し合えたのではないかと思います。
 今後は市民・行政・民間の3者が、より対話を進めてゆくことが必要でしょう。
   
 
(5)まとめ「今後の展開に向けて」
 早瀬 昇 (社福)大阪ボランティア協会事務局長
 市民公益活動とは行政がカバーできる範囲を超えたものでなくては意味がなく、それゆえ多元的であり冒険的であり革新的である。
 今日のテーマは市民がつくる公共的な活動をどう支援するかということである。
 このような市民がつくる公共活動に、行政がどう税制的援助をしてゆくべきなのか。市民公益活動とはある意味趣味であり、あそびの要素が強い。公共性の担保は市民がするべきであろう。たくさんのひとが集まればそれが公共性の担保なのでなはいか。
 また、市民公益活動の公共性は「活動内容が公開されている」という点で担保される。
 重要なのは市民公益活動に関する情報をどれだけ提供できるかという点であり、市民がどのような団体があるのかわかるものである。これは行政の都合に左右されないために、公共サイドでやるべきではないと思われ、NPOがやるべきであろう。
 市民公益活動のサポートセンターは、情報公開をやるべきであり、それには単一組織ではなく複数の組織がそれぞれの判断基準で行う必要がある。
   
 
       
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